ペルソナ設計とは?効果を最大化する作り方徹底解説
皆さんの普段のマーケティング、営業活動において、「新規顧客獲得がうまくいかない」、「ターゲットが思い描いていた層ではない」といった経験はありませんか?
今回は、そんな悩みを解決してくれる「ペルソナ設計」について解説していきます。
そもそもペルソナ設計とは、「商品開発やサービスの立ち上げ」、「販売戦略等を実施」する際に細かくペルソナを定めていくことを言います。
そんなペルソナ設計を効果的に活用し、顧客獲得に繋げるにはどのように行えば良いのでしょうか。
この記事では、顧客や人材獲得に悩む事業責任者やマーケターの方の悩みを解決できるよう、ペルソナ設計を行うための具体的な手順やポイントについて解説していきます。
ペルソナ設計とは
ペルソナとは「Persona」という語源から来ており、劇場等の登場人物や外的人格(仮面を被った人格)と訳されます。
昨今ではビジネスにおけるマーケティング用語でも使われ、「どんな方にサービスや商品を届けたいのか」というシーンで利用される言葉となっています。
そして商品開発やサービスの立ち上げ、販売戦略等を実施する際に細かくペルソナを定めていくことを「ペルソナ設計」と呼びます。
なぜそのような架空の人物を設定する必要があるのかというと、「全ての人が満足する商品・サービスは存在しない」からです。
様々な手法を用いてファクトを集め、あたかも実在するかのような架空の人物像を「ペルソナ」という手法で設計します。
これにより、「特定の誰か」という「このサービスや商品を届けたい架空の人物」が定まり、サービスや商品を届ける対象軸が定まっていきます。
言い方を変えれば、「届けたい人物は実在する人ではあるものの、まだ届けていないので「架空」の設計をしていきましょう」ということです。(これから建築を始める建造物でも全て設計書から入りますが、そういうお話になります。)
では次に、ペルソナマーケティングについてみていきましょう。
ペルソナマーケティングとは
ペルソナマーケティングとは、特定のターゲット顧客を表す架空のキャラクター、すなわち「ペルソナ」を作成し、そのペルソナに基づいてマーケティング戦略を立てる手法です。
このアプローチ方法は、製品やサービスを提供する際に、リアルな顧客のニーズ、興味関心、行動パターンを反映させることを目的としています。
ペルソナは、市場調査や顧客データなどを基に作成され、顧客の年齢、性別、職業、趣味、ライフスタイル、購買行動などの詳細な情報を含みます。
そうすることで、マーケティングチームはよりターゲットに合わせたコミュニケーション戦略を展開でき、広告、プロモーション、製品開発、コンテンツ作成などの各段階で顧客に響くメッセージを作り出すことができます。
また、ペルソナマーケティングのメリットは、一般的な市場を対象とするのではなく、具体的な顧客グループに焦点を当てることで、マーケティング活動の効果を高められる点にあります。
結果として、顧客の関心を引き、エンゲージメントを高め、最終的にはコンバージョン率の向上につなげることができます。
では、なぜペルソナを設計する必要があるのでしょうか。
ここからは、何のためにペルソナ設計をするのかについて解説していきます。
ペルソナ設計をする目的
ペルソナ設計をする主な目的は以下の4つです。
それぞれ解説していきます。
1.リードクライアントの課題を明確化する
まずペルソナ設計の目的として最初に上がってくるのは、「リードクライアントの課題の明確化」があります。
自分達の課題から入るのではなく、リードクライアントの視点を持って課題を定義します。
一見、課題の定義というアプローチという意味では「自社課題の明確化」と同じように見えるかもしれませんが、プロセスが異なるので、不慣れな場合は専門の会社に相談するか、本記事を最後までお読み頂くことをオススメします。
2.部署内メンバー内でのユーザーイメージの共有
2つ目は、「ターゲットとなる人物像の具体的なペルソナイメージをチームで共有しやすくする」ことです。
ペルソナをメンバー全員で共有できるだけでなく、コンテンツ発信が円滑になるようなコミュニケーションがチーム内で醸成される必要があります。
特に、部門の垣根を越えて、複数の人間がコンテンツマーケティングに携わる場合、ターゲット像からのペルソナ設計が明確に定まっていることが重要です。
例えば抽象的なターゲットに留めて、「30代男性、会社員」や「20代女性、独身」「40代男性、都内在住、既婚者」としてしまうと、範囲が広すぎるためメンバー同士でも人物像のイメージが異なってきます。
その場合、チーム内で提案するマーケティング活動や、サービスに反映するべき内容や優先度の部分で、意見の食い違いが生じてしまいます。
認識にブレが生じたり、意思決定に時間がかかったり、ましてや優先すべき顧客の満足が達成出来なくなることは回避しなければなりません。
つまり、ペルソナという1人の代表的な人格を設計することで、異なる部署の担当者とも共通の人物像をイメージすることができ、コミュニケーションもスムーズになり、効率よくプロジェクトを進行することが出来ます。
ターゲットをよりリアルに想像することが認識の相違を無くし、内部のメンバーが一枚岩となって強固なチームとなってプロジェクトが進められることは、とても重要なことです。
3.クライアントへの理解を深め、ニーズファースト設計思想を持てるようになる
3つ目に上げるペルソナ設計の目的は、「クライアントの理解を深め、ニーズファースト設計思想を持てるようにする」ためです。
何かサービスや商品を立ち上げたり始めるときにありがちな失敗は、「クライアントの課題は何か?」と言ったことに「おそらくこの辺りが課題→そして解決はこれだろう」という妄想的なペインポイントへのアプローチをしてしまうことです。
前述しましたが、その手前で必要なことは「ユーザーのニーズを探ること」であり、アンケートであり、ヒアリングによる課題の抽出です。
その前提があっての、「おそらくこの辺りが課題」というのと、ニーズファースト設計による「おそらくこの辺りが課題」は全く精度や確度が異なります。
もっと言ってしまうと、その後の検証フェーズにおけるPDCAの回し方にも大きく影響してきます。
前者の場合、前提がない状態のペインポイントなので、妄想が妄想を呼び込み、検証フェーズから次の改善に向けても更なる妄想でPDCAを回してしまいます。
これはデスマーチへの入り口となってしまい、プロジェクトが破綻しますので絶対に避けなくてはなりません。
故に、どれだけニーズファースト設計思想を持ってペルソナ設計が出来るかどうかがKeyとなります。
つまり、ペルソナ設計の目的を正しく理解し、クライアントへの理解も正しい方向で深めて初めて、ニーズファースト設計が機能し、チーム内メンバーも一丸となってサービス立ち上げや商品開発に集中出来るようになっていきます。
4.商品・サービスの訴求力を高める
最後の4つ目に上げるペルソナ設計の目的は商品・サービスの訴求力を高めることです。
これまでのお話の通り、ターゲット顧客のニーズや悩みを洗い出し、それに基づいて商品やサービスの訴求力を高めることは大切なことです。
商品やサービスの訴求力を高めることで伝えたいマーケティングメッセージがターゲットに届いたり、商品やサービスを顧客のニーズに合わせて調整することが出来たり、マーケティング戦略の効率と効果を最大化し、競争と差別化を図ることが可能になります。
最終的には、市場でPMFを達成し、チームもプロジェクトも顧客の期待を超える価値を提供することが出来るようになります。
このように、ペルソナ設計の目的と必要性ついてお分かりいただけたかと思います。
では次に、ペルソナ設計のやり方について一緒にみていきましょう。
ペルソナ設計のやり方
ペルソナ設計は、効果的なマーケティング戦略を展開するために欠かせないステップであり、ペルソナは、理想的な顧客像を具体的に描き、その顧客の特性やニーズに基づいて戦略を立案するための重要なツールです。
ここでは、ペルソナ設計のやり方について網羅的に解説します。
ペルソナ設計には以下の5つのステップがあります。
それぞれ解説していきます。
1. 必要な情報の洗い出し
まず、ペルソナを作成するために必要な情報を洗い出すために、以下の情報について収集しましょう。
- 基本情報: 年齢、性別、職業などの基本的な属性情報。
- デモグラフィック情報: 家族構成、所得、居住地等。
- 心理的特性: 興味・関心、価値観、好み等。
- 課題と目標: 顧客が抱える問題や課題、達成したい目標。
- 購買行動: 購入する際の判断基準、購買頻度等。
これらを情報収集することが前提となり、次のインサイトを探る手立てとします。
2. インサイトの収集
2番目に、顧客インサイトの収集においては、隠れたニーズや欲求、問題点などを表面化することを目的とします。
手段としては、アンケート調査やインタビュー、既存データの分析などを通じて、顧客の背後にある真の要因を抽出していきます。
ポイントは1回で終わらせず、そして繰り返し深掘りすることで根拠を探っていきます。
3. セグメンテーション
3番目に、収集した情報を元に、顧客を複数のセグメントに分割します。
共通の特性やニーズを持つ顧客グループを特定しましょう。
そうすることで、セグメントごとに異なるペルソナを設計出来、より詳細な顧客像を描き出すことができます。
4. ペルソナの作成
4番目でいよいよ、セグメントごとにペルソナを作成します。
ペルソナには、架空のキャラクターとして描き出され、詳細な情報が含まれます。
例えば、「マーケティング担当の30代女性、仕事熱心で新しいツールに興味を持つ」といった具体的な特徴で記載すると良いです。
5. ペルソナの名前と顔を付ける
最後に、ペルソナに名前と顔を与えて具体的にイメージできるようにします。
するとペルソナを生身の顧客のように捉えられるようになり、具体性が増すことで戦略の立案や意思決定が容易になります。
ここまではペルソナ設計をする目的やペルソナについて、そしてペルソナ設計の手法についてお話しました。
今までのお話通りペルソナを正しく設計出来ると、具体的なマーケティング活動が行えるため、特定の層に刺さるサービスや商品の認知拡大や売上につながる可能性が上がります。
しかし、設計する際の方向性や見方を間違えると、ペルソナが現実離れしてしまい、思うような結果が出ないこともあります。
また、思うような結果が出ていたにも関わらず認知や売上の伸びが鈍化するタイミングもいずれ来ます。
そういった時は必ず、この設計を見直す必要があります。
ペルソナ設計をする際の注意点
ここからは、正しくペルソナ設計するためには(または正しく設計していても)、どういったことに気を付けておけば良いのかという注意点について5つ、お話したいと思います。
ペルソナ設計をする際の注意点は以下の5つです。
それぞれ解説していきます。
1.自分たちの妄想や理想だけを反映させないこと
まず、ペルソナ設計は、あくまで収集したデータを基盤に設計すべきです。
ペルソナ設計は定性的なものが多いです。
だからこそ前述致したアンケートの作成や、ヒアリング項目をまとめるプロセスが重要になってきます。
もしこれらを戦略から外してペルソナ設計すると、良くても「ターゲットが定まりましたね」くらいの粒度で進めることとなってしまいます。
こうなるとサービスの方向性がブレにブレていき、終いにはプロジェクトチームが破綻します。
それを避けるためにも、リードクライアントや既存のクライアントから直接アンケートを取ったりヒアリングする戦略を省かないようにしましょう。
今最もすべきことは、「ペインポイントを自分たちの中から創出したり想像するのではなく、あくまでも想定ユーザーのニーズファーストで設計すべきである」ということを改めて強調しておきます。
2.データの粒度や正確性、信憑性を担保すること
次に、想定ユーザーから集めたデータを整理してペルソナ設計する段階に入りますが、ここで重要なことは「データの粒度や正確性、信憑性を担保すること」です。
ペルソナ設計は、データの質に依存します。
データの質次第で人物像も大きく変わりますし、粒度にも大きな差が出ます。
そのため、収集するデータの信憑性には気をつけて、情報にも偏りが生じないようなアンケートの取り方や母数の確保、ヒアリング項目の正確性は担保してください。
例えば質の担保でいうと、経産省が発表するデータを活用したり総務省統計局がどんな情報提供をしているのか等を隈なく調査することも必須になります。
また、WEB上からの口コミ情報やユーザーアンケートを集める際には、内容の信憑性を担保出来るようにし、きちんと裏が取れるようにしておくことが重要です。
3.現実的で具体的に設計する
3つ目の注意点としては、1つ目と似ていますが「現実的で具体的に設計する」ことです。
データを元に作成していればあまり起きないとは思いますが、実際の現場では「ここまでアンケートも取ってるしデータも客観的根拠もあるからこの辺はこんな感じでいっか」と、やや甘く設計される瞬間があると思います。
しかし、「そういった妥協は一切許さない」というチーム間での不文律を、予め作成しておきましょう。
納得感のあるペルソナを設計しないと、想定ユーザーにヒアリングやアンケートもらったとしても、どこか曖昧なペルソナ設計となってしまいますが、ここの判断は時間との戦いでもあります。
それと粒度の問題、その後のPDCAを回す体制も影響していきますので、「断固として」とは言い辛いのですが、それでもペルソナ設計に注意を払うことは、かなり優先度高めにしておくべきでしょう。
とはいえ、もし多少妥協してでもペルソナ設計して前に進まなくては行けない状況であれば、次に述べることを必ず守るようにしましょう。
4.新規顧客の視点に立って設計する
4つ目の注意点としては、ペルソナを定義する際、常連顧客の視点に偏よってしまうことで、新規顧客が持つ独自のニーズを見落とす可能性があります。
確かに、既存顧客のニーズを保つことは重要ですが、ビジネスを成長させるためには新規顧客の獲得が不可欠です。
また、ペルソナを作成時には、新規顧客の視点を積極的に取り入れ、彼らの要望に応える戦略を立てることが求められます。
この視点だけは必ず外さないでください。
5.ペルソナ設計が未完成のまま進んでしまうケース
最後の注意点ですが、先ほど3つ目の末尾にも少しお話した通り、ペルソナ設計が未完成のまま進んでしまうケースもあるかと思います。
そこはいくら杓子定規にやっても、それこそプロジェクト内に不協和音をもたらすだけです。
チーム内のコンサルタントやマネージャーがギリギリの判断で、前に進める期日を握っておかなくてはいけません。
同時に、そのスケジュール感を全メンバーに共有する使命があります。
意思決定に関わる人は必ず、「いつまでに、何を、誰が、どういうことを」辺りは常時周知しておかなくてはなりません。
ですので、ペルソナ設計は一発目で上手く行っても、行かなくても必ず見直すタイミングがやってくるタスクであると理解しておきましょう。
そして、ToDoで必ず「いつまでにペルソナ設計を更新する」という期限を切りましょう。
ペルソナ設計の更新自体は、チーム内のボードメンバーでやるだけでも全員でやるでもOKです。
ここは質の担保も大きく影響しますので、高速PDCAを回すのとどちらが良いかは現場のトップと相談しての判断等が良いかと思います。
もし仮に、トップでもその判断が付きづらいという状況でしたら、外部からコンサルタントを招聘するとミスが起こりにくくなりますのでそういう手を使うことも有効でしょう。
ペルソナ設計において一度タスクとして終えたら、そのまま放置されてしまう方がとても多いです。
これはとても危険なことですし、プロジェクトが伸びない大きな理由でもあります。
そういう時こそ、違った視座を持っている外部というのは頼もしい存在となり得ます。
これまで、ペルソナ設定のメリットや手順を解説してきました。
最後に、ペルソナの活用例に関してみていきましょう。
ペルソナの活用例
ここでは、設定したペルソナはどのように活用することができるかを3つ解説します。
1.コンテンツマーケティング
まず、ペルソナを基にしたコンテンツを作成することで、ターゲットとなるユーザーに訴求力の高い記事で有益な情報を提供することができます。
例えば、健康志向の若年層をターゲットにしたペルソナがある場合、フィットネスや健康食に関するアドバイスを含むコンテンツを作成して、このグループの関心を引くことができます。
2.製品開発
次に、ペルソナを使用して、顧客のニーズに合わせた製品機能を開発します。
例えば、高齢者をターゲットにしたペルソナがある場合、使いやすさと安全性を重視した製品設計が重要になります。
また、ペルソナに基づいて開発された製品は、ターゲット市場においてより受け入れられやすくなります。
3.ユーザーエクスペリエンス(UX)デザイン
最後に、ウェブサイトやアプリのデザインをペルソナに基づいて行うことで、ターゲットユーザーの利便性を向上させることができます。
例えば、若者をターゲットにしたペルソナを持つ場合、直感的でダイナミックなインターフェースが好まれるかもしれません。
このようにペルソナに基づいて製品やサービスの開発を行うことで、より多くの適したユーザーに届けることができ、ニーズを満たす事ができます。
まとめ
過去に弊社でも、ペルソナ設計したクライアントワーク事例があります。
具体的な業種業界はここではお伝え出来ませんが、本記事にある通り、アンケート作成からヒアリング項目を練り、ターゲットとしている属性からペルソナを定めていきました。
結果、自社だけでは見えなかった視点や気付きが多々浮上し、ペインポイントと想定していた当初の戦略をニーズファースト設計に転換し、何もない状態から4ヶ月で無事に事業が立ち上がりました。
このプロセスを踏まえて立ち上げる4ヶ月後と、なんとなくぼんやりとターゲットだけ定まった4ヶ月後では、雲泥の差ということが本記事にてお分かりになるかと思います。
ただ、事業立ち上げは本当にたくさんのことをやらなくてはならず、また優先度を間違えるとすぐ工数が嵩みスケジュールを引き直さなくてはならないという一歩間違えるとデスマーチ化してしまうものなので、なかなかその危険性に気付かない事業部の方や経営者の方は多いようです。
運転は、やりながら覚えるも一理ですが、それでも最低限の座学や実技がないと免許交付されません。
同じくして新規事業は免許不要ではありますが、初期の限られたキャッシュや時間や人材をどこに集中と選択するかの最低限知識や経験が無いと(或いは知識が経験がある方とやらないと)失敗してしまいます。
本記事を最後まで読まれたあなたにはぜひ、未然に失敗を防ぐという予防の概念を取り入れ、正しくペルソナ設計されることを願って止みません。