コンセプト設計でビジネスを成功させるためのポイント・作り方
ビジネスを成功させるには明確なビジョンとコンセプトが不可欠ですが、しっかりと設計することはそう簡単ではありません。
今回はビジネス上においての戦略の基盤となる「コンセプト設計」についてお話します。
コンセプト設計とは、簡単に言うと「アイデアを実現可能なビジネスモデルにする」ことで、そのビジネスモデルが「どのように顧客の問題を解決し」、「どの市場で差別化を図るか」を定義するプロセスのことを指します。
この記事では市場調査から始まり、ターゲット顧客のニーズを理解、独自の価値提案の形成、そしてチーム全員が一致団結してビジョンを実現するまでのステップを詳しく解説します。
コンセプト設計とは
コンセプト設計とは、製品、サービス、ブランド、またはビジネス全体に対する基本的なアイデアや方向性を策定するためのプロセスです。
これは、商品やサービスの独自性を明確にし、消費者に訴えかけるために使用されます。
コンセプト設計を戦略の一環として行うことは重要なステップで、サービスや製品のオリジナリティやブランディングの向上に繋げることができます。
では、そんなコンセプト設計にはどのようなものがあるのでしょうか。
その主なコンセプトは以下の5つが存在します。
それぞれ解説していきます。
1.商品コンセプト
まず、商品コンセプトとは、製品やサービスの基本アイデアのことを指します。
具体的には、商品がどのような問題を解決し、どのような価値を提供するのかを定義するのですが、例えばスマートウォッチが健康管理をサポートすることを商品コンセプトとする場合、その全ての機能はこの目的を実現するために設計されます。
このコンセプトは製品の開発からマーケティングに至るまでの指針となるため、丁寧に作り込む必要があります。ここの重要度を落とさなければ、顧客のニーズに沿ったサービス設計や開発が出来るようになります。
2.事業コンセプト
2つ目に、事業コンセプトは企業のビジョンやミッション、そして提供する価値を定義します。
例えば、再生可能エネルギーに特化した企業が「持続可能な未来への貢献」という事業コンセプトを持つ場合、事業活動全体がこの理念に基づいて行われます。
事業コンセプトは企業の方向性を示し、企業がどのような価値を提供し、どの市場で競争するのかを表したものです。
それが今後のビジネスプランの基盤となり、延いては中長期的に成功するための戦略を描くことができます。
3.デザインコンセプト
3つ目に、デザインコンセプトは、製品やブランドの“ビジュアルアイデンティティ“を定めます。
これにより、製品の外観やパッケージデザイン、ブランドのロゴやウェブサイトのデザインが決まっていきます。
例えば、ミニマリズムをデザインコンセプトに掲げるブランドは、シンプルで洗練されたデザインを追求する等です。
これは消費者に対してブランドの価値観を伝える重要な手段で、ブランドイメージや視覚的に訴求する仕掛けを作ります。
4.SNSコンセプト
4つ目に、SNSコンセプトとは、「ソーシャルメディアを通じたコミュニケーションの戦略」のことを言います。
これは投稿の内容や頻度、ターゲットとするフォロワーを定めるものであり、ブランドのオンライン上での運営方法や人格を設計します。
例えば、若者向けファッションブランドを運営するにあたって「若々しく自由なスタイルの共有」というSNSコンセプトにすると、投稿はこのテーマに沿った内容になり、フォロワーのエンゲージメントが上がりやすくなります。
コンセプト自体の設計は今まで説明してきたものとさほど変わりはないのですが、SNSの場合はどのようなコンテンツを共有し、どのようにフォロワーとの対話を設計するのかを軸としていきます。
その前提として、ブランドの要件とコミュニケーション戦略を定義します。
5.メディアコンセプト
最後に、メディアコンセプトとは、企業がメディアを通じてどのように情報を発信するかや、ターゲットユーザーとの関係を構築するか、ということです。
具体的には広告戦略、PR活動、コンテンツマーケティングが含まれ、一貫したブランドメッセージを伝達する必要があります。
例えば、エコフレンドリーな製品を扱う企業が「持続可能性への貢献」をメディアコンセプトとすると、このテーマに関連する内容が主軸でメディア戦略が展開されることになります。
メディアコンセプトは、ブランドメッセージが一貫性を保ちつつターゲットに適切な方法で、伝えたい情報を届けられるようにするための手段です。
コンセプト設計を行うメリットと重要性
ここまでで5つのコンセプトを解説してきました。
では、そんなコンセプト設計を行うメリットとは何でしょうか。
メリットは主に以下の5つです。
それぞれ解説します。
1.オリジナリティ
1つ目のメリットは、コンセプト設計を通じて、オリジナリティを打ち出すことができる点です。
独自のコンセプト設計を通じて、他社とは異なる独特の価値を提供することが可能となります。
例えば、同じカフェ業界内でも、特定の文化やコンセプトを前面に打ち出すことで、顧客の好奇心を刺激し、訪れたいと思わせる空間を創出することができます。
オリジナリティは競合他社との差別化を図り、顧客の記憶に残りやすくするために重要なのです。
2.ターゲットの明確化
2つ目は、ターゲットを明確に定義することができる点です。
例えば、エコ意識の高い若年層をターゲットにする場合、サステナブルな素材を使用した製品や、環境保護に貢献する企業活動をコンセプトにすることで、ターゲット層の関心を引き、共感を得ることができます。
ターゲットを明確にすることは、マーケティング戦略の基盤を築くために不可欠ですので、しっかりと設定しましょう。
3.提供サービスの価値明確化
3つ目は、提供するサービスや製品の価値を顧客に明確に伝えることができる点です。
例えば、健康とウェルネスに焦点を当てたレストランは、有機食材の使用や栄養バランスに配慮したメニュー設計をコンセプトとして打ち出すことで、ピンポイントで健康志向の高い顧客に対する価値提供ができます。
提供するサービスの価値を明確にすることで、顧客の選択肢の候補にあげてもらえ、比較検討されやすくなります。
4.競合との差別化
4つ目は、ここまでの3つのメリットを通して、他社にはない独自の特徴やサービスを生み出し、顧客の注目を集め、選ばれる理由即ち差別化を生み出すことができる点です。
例えば、同じファッション業界でも、持続可能性に重点を置いたブランドは、エコフレンドリーな素材や製造プロセスを発信することで、意識の高い消費者から選ばれる可能性が高まります。
5.ブランディング
最後は、ブランドが持つ独自の価値観や戦略設計をコンセプトを通じて表現し、「顧客との共感を生み出すことができる」点です。
例えば、冒険と自由をコンセプトにしたアウトドアブランドは、その思想をデザインやマーケティング活動に反映させることで、顧客層の心を掴むことができます。
このように、ブランドのストーリーや理念を顧客に伝え、エンゲージメントを高めることで、長期的な顧客関係を構築し、顧客満足度を高めることができます。
コンセプト設計のためのアイディア出し6原則【SUCCESs】
ここまで、コンセプト設計の種類やメリットについて解説してきました。
特にコンセプト設計を行う際、アイデア出しが重要というお話をしましたが、どんなアイディアを基にコンセプトを出せば良いのかがわからない、という声が多いかと思います。
そういう時は、「SUCCESs」を活用してみましょう。
SUCCESsは、コンセプト設計において効果的なアイデアを立案する6つの原則を表すものです。
特徴としては、アイデアやコンセプトが覚えやすく、魅力的で説得力のあるイメージが創られます。
ここでは、6つの原則をそれぞれ解説していきます。
1.単純性(Simple)
まず1つ目に単純性の原則です。
単純性の原則は、コンセプトやアイディアをできるだけ簡潔にし、核となるメッセージを明確にします。
例えば、皆さんもよく使うであろうGoogleの検索エンジンは、検索ボックス1つという極めてシンプルなデザインが、ユーザーに直感的な使いやすさを提供しています。
この単純なUIが、情報を検索するスピードと効率の良さを表しており、Googleのコアコンセプトが伝わってきます。
つまり複雑さを排除して、単純で直感的なアイディアに焦点を当てると記憶に残りやすく、且つメッセージ性の強いコンセプトを創り出せるのです。
2.意外性(Unexpected)
2つ目に意外性です。意外性は、予想外の要素を取り入れることで人々の注意を引き、関心を惹きつけることが出来ます。
例えば、スナックメーカーが一般的なフレーバーではなく、「わさび味」の製品を発売したケースがそれです。
この予期せぬフレーバーは消費者の好奇心を刺激し、SNSでのバズを生み出しました。
意外性のあるアイディアは、人々の好奇心を駆り立てたり、強烈なメッセージを残したりして大きなインパクトを与える効果があります。
3.具体性(Concrete)
3つ目の具体性の原則は、アイディアを明確で理解しやすい形で表現することを指します。
例えば、IKEAの組み立て説明書がわかりやすいです。
複雑な家具も、ステップバイステップの具体的なイラストと簡潔な指示で、誰でも簡単に組み立てられるように設計されています。
IKEAのように、具体性があると、製品への信頼と満足度が高まります。
抽象的な概念よりも具体的な情報の方が人々にとって理解しやすく記憶に残りやすいので、アイディアは具体的な例やデータで裏付けるようにしましょう。
4.信頼性(Credible)
4つ目の信頼性は、アイディアやメッセージが信頼できる情報に基づいていることです。
例えば、30日間返金保証のオファーとかはわかりやすいです。
この保証は、サービスの自信と、消費者にリスクなしで試してもらいたいという意図を表し、サービスへの信頼を担保し、顧客の購買決定を後押しする一つの要因となります。
信頼できる情報源からのデータや証言は、説得力を高めるために有効です。
5.感情性(Emotional)
5つ目の感情性の原則は、人々の感情に訴えかけるストーリーを生み出すことです。
例えば、ペットフードの広告で、飼い主とペットの絆を描いたストーリーは、共感を呼ぶ感情的なストーリーテリングで、視聴者の心を掴み、ブランドへの愛着を深めました。
感情に訴えかけることで、視聴者に深い印象を与え、彼らが行動するきっかけとなります。
6.物語性(Story)
最後に物語性ですが、これはアイディアやコンセプトを自分事のストーリーのように表現することで、より強いインパクトと記憶への残りやすさを打ち出しているため、視聴者の心に深く響きかせることができます。
例えば、Airbnbの「旅は人との出会い」キャンペーンは、実際のホストとゲストの体験談を物語として紹介することで、ほぼ全員がゲスト側になった体験を持っているところを突いて、サービスを提供する側の価値を改めて訴求しています。
物語には、それそのものが人を引き込む力があるので、実際共感や行動を生み出しやすいです。
読者の皆さんも体験談やお客様のレビュー等を見て信頼し、判断されて動いているかと思いますが、そのロジックを想像して頂ければと思います。
物語性を取り入れることで、単なる製品やサービスの紹介から一歩踏み込んだ形で視聴者や読者が共感してもらえたり、興味付けが出来たり、信頼を得られやすいコンテンツを作ることが出来るようになります。
このように、6つの原則を組み合わせることで、ターゲットに響く魅力的なコンセプトを創ることが出来ます。
そしてそれぞれの原則が持つ力を理解し、状況に応じて適切に使い分けることが、コンセプト設計の成功へのKeyとなります。
コンセプト設計のやり方
ここまでコンセプト設計の種類やメリット、アイデア出しの原則などを解説してきました。
では、ここからは実際にコンセプト設計を一緒にやってみましょう。
コンセプト設計のやり方には主に以下5つのステップになります。
それぞれ一緒にやっていきましょう。
1.ターゲットの分析
最初のステップは、製品やサービスの「ターゲット顧客を理解する」ことです。
例えば、スタートアップ企業が新しい健康飲料を市場に投入する場合、健康志向の高い若年層やスポーツを楽しむ人々が主なターゲットになる可能性があります。
このステップでは、市場調査にてターゲット顧客のニーズや好み、行動パターンを深く掘り下げ、分析をします。
2.目的の明確化
次に、製品やサービスが解決しようとしている問題や、提供しようとしている価値を明確にします。
健康飲料の例で言えば、忙しい毎日でも手軽に栄養補給が出来る点が主な目的の一つとなり得ます。
このステップはサービス開発の方向性を定め、コンセプト設計の土台を作りますので、非常に重要です。
3.特徴や強みの把握(SWOT分析の活用)
3番目に、製品やサービスの特徴や強みや弱み、機会、そして脅威を把握するためにSWOT分析を活用します。
例えば、健康飲料であれば、天然成分を使用することや独自のフレーバーが強みになり、競合他社との類似製品が脅威になるかもしれません。
このSWOT分析を通じて、強化すべき要素と改善点を明確にすることができます。
4.アピールポイントの設定
4番目は、ターゲット分析とSWOT分析の結果をもとに、製品やサービスのアピールポイントを設定します。
例えば健康飲料の場合、1日分のビタミンがこれ1本で摂取と表示したり、「砂糖不使用で自然の甘さだけ」といった点がアピールポイントになります。
アピールポイントを洗い出すことで、コンセプトの軸となるメッセージを抽出することができます。
5.コンセプトの検証
最後に、設計したコンセプトを検証します。
対象とする顧客グループに対してアンケートを実施したり、顧客を集め意見をし合うフォーカスグループを開催するなどをして、コンセプトを評価します。
そして評価されたフィードバックを基にコンセプトを微調整し、最終的なコンセプトを確定させていきます。
これらのステップを踏むことで、市場に受け入れられるコンセプトを設計することが可能となります。
コンセプト設計を行う際のポイント
先ほどはコンセプト設計のやり方を解説しましたが、コンセプト設計を行う上では重要となるポイントが3つございます。
ここからはそちらの3つをご紹介します。
1.ユーザー目線で考える
まず重要なポイント1つ目は、コンセプト設計では常にユーザー視点を中心に据えることです。
例えば、家族向けの旅行プランニングサービスを提供する際は、子連れの家族が直面する困難やニーズを深く理解し、それらを解決する機能やサービスを提案することが必要です。
2.目的・ターゲットの明確化
2つ目に重要なポイントは、はっきりとした目的やターゲットの明確化です。
例えば、若年層をターゲットにしたエコフレンドリーなファッションブランドを立ち上げる場合、環境意識の高い消費者にアピールするための独自の価値提案が必要となります。
3.サービスの特徴やメリットの明確化
3つ目の重要ポイントは、提供するサービスや製品の独特な特徴やメリットを際立たせることです。
競合と差別化し、ターゲットの関心を惹きつける狙いがあります。
例えば、オンデマンドのフィットネスアプリが、時間や場所に縛られずに運動できる利便性を訴求することで、忙しい現代人のライフスタイルに合ったソリューション提供となります。
これら3つのポイントに注意を払い、ユーザー視点でコンセプト設計を進められれば、PMFへと近づくことが出来ます。
コンセプト設計の実例
では実施にコンセプトを設計して成功した企業は、どのような事例があるのかを見ていきたいと思います。
以下の事例は、実際の企業やブランドがコンセプト設計を活用してビジネスの成功を収めたものですので、ぜひ参考にしてみてください。
1. Apple - "Think Different"
Appleは、"Think Different" というコンセプトによって、ブランドを確立しました。
このコンセプトはApple製品の価値観を表し、革新的で斬新なアプローチを提唱することでユーザーに、「他社製品では感じることの出来ない、新しい体験を提供する」ことを訴求しました。
結果として、Appleは革新的なブランドとしての地位を確立し、多くのファンを獲得し、今では使っていない人を見つける方が難しいというくらい普及しています。
2. Coca-Cola - "Open Happiness"
Coca-Colaは、“Open Happiness” というコンセプトを採用し、世界中の人々に幸福と楽しみを提供することを掲げました。
このコンセプトは、Coca-Colaの製品をシンボリックな幸福の象徴として位置づけ、広告キャンペーンやマーケティング活動に統一感をもたらしました。
結果、“Open Happiness” のコンセプトは、Coca-Colaのブランド価値を高め、消費者に愛されるブランドとなりました。
3. Nike - "Just Do It"
Nikeは、"Just Do It" というコンセプトによってスポーツ愛好者を勇気づけ、行動を起こすことの重要性を伝えました。
このコンセプトは、スポーツと運動の大切さを表しており、個人の達成感や行動することの大切さを訴求しておりました。
“Just Do It” のコンセプトは、Nikeの広告キャンペーンと製品ライン全体に統一感をもたらし、ブランドの成功に貢献した良い典型例だと言えます。
これらの事例は、コンセプト設計がブランディングまで行き届いているので、“企業を成功に導いた“良いお手本と言えるでしょう。
事業アイディアから丁寧に分解し洗練されたコンセプトは、ブランドのアイデンティティをより強化し、ターゲットへの訴求力を高め、競争力も上がります。
結果として、ビジネスの成功に繋げることが出来るのです。
まとめ
最後に、コンセプト設計の要点を6つにまとめました。
- コンセプト設計は、ビジネス戦略の重要な一環であり、「製品」、「サービス」、「ブランド」、さらに言うと「ビジネス全体」に対する基本的なアイデアや方向性を策定するプロセスである
- コンセプト設計の種類は多岐にわたり、「商品」、「事業」、「デザイン」、「SNS」、「メディア」などの5つのコンセプトを考慮する
- 5つのプロセスのメリットは、「オリジナリティの確立」、「ターゲットの明確化」、「価値の明示」、「競合との差別化」、「ブランディングの強化」などが含まれる
- コンセプト設計においてSUCCESsという6つの原則を活用すれば、より魅力的で効果的なアイディアを抽出することが出来る
- コンセプト設計の手法は5つあり、「ターゲットの分析」、「明確な目的の設定」、「特徴や強みの把握」、「アピールポイントの設定」、「コンセプトの検証」である
- 成功するためには、常にユーザー視点を意識して明確な目的とターゲットを定義し、サービスの特徴やメリットを明確に伝える必要がある
コンセプト設計は、オリジナリティやブランディングを強化し、ターゲットに訴求するために使われる重要な戦略です。
ここまで読めばもうお分かりだと思いますが、緻密で丁寧なコンセプトを設計するためにもユーザーの声も聞きながら反復して精度を高めていきましょう。
そして読者の皆さんが成功することを願って止みません。